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第28回 合同会社うなづき商店  
第28回 合同会社うなづき商店
泡と消えなかった地サイダーの新事業
地元の支援と公的支援が事業を育てた

 地酒、地ビールときたら、次は…。その候補のひとつに、“地サイダー”が名乗りを上げているようだ。全国清涼飲料工業会の発表によると、全国の地サイダーの銘柄数は、平成19年の62種から今年(22年)の5月には139種と、この3年間で倍以上に増えた。ただひょっとして、ブームの影で“泡と消えた地サイダー”もあったのかもしれない。
 その、“泡もの”の新ビジネスに、宇奈月町商工会・青年部のメンバーが挑み、地域貢献を第一の目標に掲げて乗り出した。当センターとしても、“芽生えた新ビジネスが泡と消えず、しっかりとした事業に育ってもらいたい”と、支援に乗り出したところだ。

公的支援で、個人の立て替え払いを解消

 平成21年2月のことである。商工会青年部の全国大会が福岡県であった。宇奈月からは後に「うなづき商店」の中心メンバーになる中林政彦さん、古川和幸さんが参加。そこで意気投合した指宿(鹿児島県)のメンバーから、「指宿温泉サイダーを発売して、地域の活性化を図っている」と聞かされた。
 中林さんはこの話にピンとくるものがあった。そして宇奈月に帰って商工会青年部の仲間に話すと、「やらんまいけ」とまとまったのである。さっそく小ロットの生産でも協力してくれる飲料水メーカーを探し、商品開発にも乗り出した。
 その一方で、地サイダーを生産・販売していく主体としての、法人の設立準備も開始。商工会青年部のメンバーが中心となるが、皆それぞれ本業を持っており、それを投げ出して新事業を立ち上げるわけにもいかない。そこで、本業に支障が出ないようにすることと、地域貢献になるビジネスに育てることを基本的な考え方として、出資者(1口2万円)を募ったのである。
 中林さんの呼びかけに応じたのは13人(うち法人が1社)。50万円の資金が集まった。そのうちの6人が、会社の運営を手伝う(一種の執行役員になる)と名乗りを上げ、21年10月の法人設立となったわけだ。
 ただ、50万円の資金で、地サイダービジネスを始めるには無理がある。事業費の個人的な立て替え払いもあったようだ。“こんなことを続けたのでは事業として育たない”と誰もが思い始めたその時、メンバーのひとり中谷英之さん(同社業務執行社員)が、「中小企業支援センターで『創業・ベンチャー挑戦応援事業』のことを聞いて、応募してみよう」と提案。氏はとやま起業未来塾の修了生で、当センターや挑戦応援事業のことを知っていたわけだ。

地元の資源を生かし、地元での販売にこだわるうなづき商店代表社員の中林さん(本業は畳店経営)。「将来的には、宇奈月の温泉水を生かした商品もつくりたい」と意欲満々。 黒部・生地で採取した水を原料にした「黒部の泡水」(330ml入、250円)。ボトルの形状、王冠キャップなど、レトロ調にこだわっている。宇奈月温泉街の宿泊施設や土産物店、黒部の魚の駅などで販売。


第2弾の商品も開発中、来春には…

IT系企業に勤める中谷英之さん(同社業務執行社員)。「黒部の泡水」のOEM先を探すのに活躍。
 地サイダービジネスは、当センターとしても興味ある新事業だ。観光振興、地域の活性化、将来的には雇用の創出も期待される。審査を経て21年度の挑戦応援事業に採択されて支援を開始(助成金100万円)。それが商品開発と会社立ち上げに生かされ、22年1月末の「名水サイダー黒部の泡水(あわみず)」誕生と相成ったわけだ。
 支援によって、個人的な立て替え払いも解消した。また当初から「6人の当面の人件費は、がまんしていただくことを了解していただいていた」(中林さん)ので、キャッシュフローも無理なく回り始めた。
 そして幸運にも「黒部の泡水」が売れたのである。当初、年間で20,000本を目指していたが、発売開始から初年度決算8月までの7カ月間で23,000本を販売。泡と消えるどころか、大きな実績を出したわけだ。
 好調な滑り出しといえるだろう。ただ、メンバーそれぞれが本業を持ち、またまったくの畑違いの新事業であるため、戸惑うことも多々あった。そこで同社では、国の中小企業応援センター事業を活用して専門家(中小企業診断士)によるコンサルティングを受け(月1回×3カ月、1回3~4時間)、業務改善や中長期の事業計画を見直す中で新商品の開発にも着手。その後「とやま新事業創造基金 地域資源ファンド事業」にも採択され(22年度)、地サイダーの販路開拓や新たな地サイダーの開発に向けて、一歩を踏み出したところだ。
 「平成23年の春には、当地の他の地域資源を生かした、新しいサイダーが生まれるでしょう。私たちのビジネスがこの1年で泡と消えなかったのは、支援制度を活用したこともさることながら、製造や販売でたくさんの方々のご協力をいただいたことが大きい」と中林さんは振り返り、中期計画実現への意欲を示した。
地元のイベントなどでも積極的にPR。今は6人のメンバーがそれぞれ本業の傍らに、うなづき商店を運営しているが、商品の種類や販売数が増えてくるとパート等雇用を生む可能性も出てくる。6人のメンバーは、地域でお金・もの・人が動くことを第一目標にしている。

 所在地/黒部市宇奈月町下立2835-1(中林畳商会内)
 代表者/中林 政彦
 資本金/50万円
 従業員/0
 事 業/清涼飲料水の製造・販売(黒部川の伏流水を使用した名水サイダー「黒部の泡水」等の製造・販売)
 TEL/0765-52-2822
 URL/http://www.kurobe-unazuki.jp/ (黒部・宇奈月温泉観光協会のHPに「黒部の泡水」の紹介あり)

作成日2010.12.06
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