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第16回 「有限会社シザーズジャパン」  
  
第16回 有限会社シザーズジャパン
オリジナル商品が育ちにくい業界
「ならば自分が」と創業して…

 「確か小学校5年生の時だったと思います。テレビでリニアモーターカーを見て、磁石の力で電車が走るなんてすごい、と感動しました。その印象が強烈に残っていて、新しいヘアカット用ハサミの開発につながったのです」
 長江社長は、昨日そのテレビを見たのではないかと思うほど興奮気味に語り、カリスマ美容師も愛用しているハサミ「リジットロックシステム」(特許出願中)を出してくれた。このハサミ、磁石の力を利用して自動的に閉じようとするスグレモノ。理・美容師は、1日数万回、ハサミの開閉をすることもあるため、指(特に親指)の筋肉痛や腱鞘炎に悩む人が多く、パワーアシストするこのハサミは朗報として彼らの間に広まった。


左の3本は、標準的なリジットロックシステムのハサミ。ステンレス製。1本10万円から。右の2本は特注品で、手前はハンドル(指を入れる部分)がシルバーとステンレスのコンビネーション。奥はピンクゴールドとステンレスのコンビネーション。ちなみにお値段は、前者が359,000円。後者は580,000円(ともに予価、19年1月発売予定)。シルバーアクセサリーデザイナーの米山氏(魚津市出身)とのコラボレーションによりできあがった。

オリジナルなハサミをつくりたい!

当機構の支援で導入されたワイヤーカット放電加工機。右のような原形を切り出すのが容易になり、売り上げ増と新商品開発に貢献した。
 長江社長は、美容師10年、理容用品販売会社勤務10年を経て、平成13年に同社を設立。使う立場、売る立場の経験を踏まえ、つくる立場としての創業である。
 「あるアイデアをメーカーに伝えて、使いやすいハサミをつくってもらっても、数カ月後には他のメーカーから形を少し変えた同様のハサミが出ている。ハサミはOEM生産されているケースが多いためこうしたことはよくあるのですが、それを防ぐには自分がメーカーになるしかないと思ったのです」(長江社長)
 しかし、創業と同時に新商品を出せるほど甘くはない。金属板からハサミの原形を切り出すワイヤーカット放電加工機1台でも、1,000万円程度。その他、溶接や研磨などの機械、また作業のための工場も必要になってくる。当初は、半製品のハサミの原形を仕入れ、加工して販売。工場もプレハブだった。
 オリジナルなハサミを製造するには、ワイヤーカット放電加工機が要る。悶々としていた時、知人が当機構の設備資金貸付制度を紹介してくれた。長江社長はすぐに中小企業支援センターを訪れて申込み、1カ月余の審査を経て、平成14年秋に認定。念願のワイヤーカット放電加工機を導入したのであった。


医師に相談して…

ハンドルにダイヤモンドをあしらった特注品。シルバー+ステンレス+ダイヤモンドの場合は、656,000円。ピンクゴールド+ステンレス+ダイヤモンドの場合は、865,000円(ともに予価)。
 このマシンは、長江社長の右腕のように活躍。原形を自社で切り出せるため、コストを抑えることが可能になった。また試作品の切り出しにも威力を発揮し、新商品開発の道も開いた。
 冒頭に紹介したハサミの開発に取り組み始めたのは、平成16年春のことである。ハサミの接合部は従来のネジの代わりにピンで固定し、回転軸にベアリングを使用。その中に磁石を内蔵させ、磁石の反発力を利用して、自動的に閉じるハサミを開発したのであった。
 長江社長は再び、中小企業支援センターのドアをたたいた(17年2月)。今度は、このハサミの使い勝手のよさをデータにしたい、という。センターでの相談では、
 (1)モニターを使って調査する
 (2)筋電図をとって医学的に解明する
 (3)力のかかり方を工学的に測定する
 の3つの案が出たが、センターの紹介で後日改めて富山県国際伝統医学センターの医師に相談すると、「開発品と従来品を7日間の間隔を置いて2回使用してもらい、“特につらい、つらい、普通、らく、非常にらく”の5段階評価で、20以上のサンプルをとればいい」と答えが返ってきた。
 さっそく長江社長は、知り合いの理・美容師50名の協力を得て調査を実施。ほとんどが「楽になった」と答え、中には「肩凝りが治った」「頭痛がとれた」、というありがたい反応もあった。またこのモニター調査によって、理・美容師の間にこのハサミの評判が伝わり、宣伝効果としても大きなものをもたらした。


ハサミの裾野は広い

長江良光社長
 同社の売上げは、平成15年度に急伸した。前年度約9,000万円に対して、15年度は約2億円。14年秋に導入したワイヤーカット放電加工機と、営業所を全国に5カ所構えて販売体制を充実したことが効を奏したのであろう。売り上げの規模は、以後2億円前後で推移し、今年度は若干の伸びが期待されている。
 「生産力、営業力を勘案すると、今の陣容では2億数千万円が限界だと思います。もうしばらくこのまま行って内部を固め、数年先にはまた打って出たい。新商品のアイデアはまだ5つは持っている。ハサミは理・美容業界だけでなく、剪定、料理、内装、縫製などいろんな業界で使われていますから、裾野は広い」
 ハサミにかける長江社長の思いは熱い。今年1月のセンター来所の折には、ペット用バリカンの開発のアイデアも飛び出し、その設計が進みつつあるという。
 名実ともに、日本を代表するハサミメーカーに成長することを願って止まないところだ。


[企業の概要]
所在地 黒部市石田1236-2
代表者 長江 良光
資本金 300万円
従業員 21名
電 話 0765-56-6112
FAX 0765-56-6113
E-mail info@scissors-japan.com
URL http://www.scissors-japan.com/
事業概要 理・美容用ハサミの企画・製造・販売


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