ニュースページトップへ戻る TONIOトップへ戻る
富山国際大学  

第21回富山国際大学
地域学部+地域研究交流センター
地域の課題を、地域の人が、
地域で解決することを目標に!

 平成2年に開学した富山国際大学。10年後の平成12年には我が国初の地域学部を創設し、「とやま」というフィールドにしっかりと根を下ろすために地域研究交流センターを併設して、地元への浸透を図っている。地域連携、産学連携というと、とかく技術開発を中心にした理系の話題になるが、同大学では人文・社会学系でも地域との連携を密にしようと積極的に展開。その事例等を挙げながら、学部やセンターの取り組みを紹介しよう。

 「経済学部、法学部、工学部…と、ある学問領域から社会の現象や課題にアプローチしてきたのがこれまでの姿です。しかし地域の問題は単一の学問でアプローチできるものではありません。複合的で、かつ学際的な視点で見つめないと21世紀の地域の課題は解決できないのではないか。そういう観点から創設されたのが地域学部です」
 取材に応じていただいた地域学部の長尾治明教授が同学部の特徴を語り、「特に地域の問題を解決するためには環境、情報、経営の3つの視点がないと問題の解決には当たれないのではないかということで、この3つのコースを設けています」と続けた。
 従って学生は、いずれかのコースを選択する。しかし、単一のコースだけを履修したのでは、従来の学部、学科と変わらない。そこで同学部では、どのコースを選んでも他の2コースのカリキュラムも一定単位数は履修しなければならないようにし、ゼネラリストを目指しつつも、選択コースの専門家を育てることを目標に置いている。

学生も積極的に地域貢献

えきほく笑店街事業(上)や、まちぶら事業(下)による市街地の様子。商店街や商工会議所などのスタッフに混じって、学生も企画運営に参加している。
 その最終的な目標は、地域の課題を地域で解決できる人材を育成すること。そこで、地域学部では在学中にも学生自身が地域貢献に取り組むことを勧め、大学側もそれを積極的に支援している。その実例を紹介すると…。
 まずは富山駅北地区の賑わい創出事業。通称「えきほく笑店街」と呼ばれているこのイベントには同学部の学生も企画・運営に参加し、フリーマーケットやストリートパフォーマンス、カフェテリアなどが繰り広げられている。また富山市中心商店街活性化事業「まちぶら」で、まちづくりとやまが運営する「まちぶら」というWebサイトで、商店街のイベントやお店を紹介するコーナーを運営しているのも、地域学部の学生である。
 学生たちのこうした活動を、大学では「夢の架け橋助成事業」と呼んで積極的に支援。学生から地域貢献にまつわる事業の企画書を募集し、実現性や貢献度があると審査されたプランには、大学が助成金を出して学生の活動を応援しているのである。
 また、入善町商工会青年部より依頼されて本年度後期に進めている事業では、地域学部の学生が入善町の観光のあり方をサポート。学生が観光客の視点に立って、気づいた点などを提言するものである。
 「学生8名が、昨年12月に下山発電所美術館や椚山いろり館など5カ所を巡り、印象や問題点、解決策を話し合って提案にまとめ、1月28日には商工会の皆さんの前でプレゼンテーションを行いました。学生のうちにこうした経験が積めるのは本当にいい。地域の課題を、地域の人が、地域で解決する実践的な場ですから、将来的には、実習の単位として認めてもいいのでは…、と思っています」(長尾教授)


寄付講座で生涯学習と観光振興のニーズに対応

「観光政策論」の講義の様子。学生とともに社会人も多数参加している。
 観光振興との関連で付け加えると、富山県の支援(寄付)を受けての講座「観光政策論」も、地域貢献のひとつといえるだろう。この講座は平成16年度から始まって本年度で3年目。地域の人たちの間で高まってきた生涯学習のニーズに応えるために、また県や県内市町村が観光振興に積極的に取り組もうとする動きに合わせて始められた。
 講義の基本的なスタイルは、観光政策や観光産業等で実績を上げた、いわゆる観光カリスマなどを順に招いて、その経験をうかがうところから富山での観光振興のあり方を学ぼうというもの。本年度は長野県白馬村の元村長・福島信行氏、大阪観光大学・鈴木勝教授、東京国際空港ターミナル・佐々木一成取締役など、観光に携わる産学官の多士済々12人が講師に名を連ね、後期の毎週月曜日に講義を行ってきた。
 県の寄付講座であるため、講義は一般にも公開されている。従って地域学部の学生はもとより、地域の方々の他に観光関連の行政担当者、観光協会や商工会議所、まちづくりの担当者、また観光施設の経営者・管理者などが聴講。一般の受講者からは好評を博すとともに、学生には社会人と学ぶことによる一種の緊張感を与える場ともなっている。
 「富山県には、一級の観光素材がたくさんあります。しかし県外客の誘致、交流人口を増やすという点で見ると、その素材を活かしきれていないように見受けられます。また、素材のよさが地元でも認知されていなかったり、PRの方法に検討の余地があったりするケースもある。そういう課題を解決するヒントを得るためのいい機会になっているようです」
 長尾教授は「観光政策論」の意義をこう語り、「予算や外部講師の協力が得られる限りは講座を続け、地元の観光振興の一助にしたい」と熱い思いを語った。


ビジネスプランの完成度にこだわらず、6~7割できたら起業しよう!

 さて、長尾教授の専門はというと、中小製造業や中小商業者のマーケティング、流通のあり方等の研究である。学外の活動も積極的に行い、県や地元市町村の市街地活性化、中小製造業振興のための各種委員会の委員を務め、県内のベンチャー企業の取り組みを紹介するテレビ番組(CATV)のキャスターも担当。また本県に赴任する前は、経済産業省が所管するシンクタンクで官公庁・地方自治体からの委託研究調査、民間企業・団体からの要請による調査研究やコンサルテーションなどを担当してきた経験の持ち主で、つくる立場、売る立場、買う立場の姿勢や動機などに通じている。
 そこでまず、新規起業が富山ではなぜ低くなってきたのか聞いてみた。富山県には進取の気性に富む人が多いと“かつては”いわれ、地方都市には珍しいほどの大きな産業集積地を形成したが、ここ10年ほどの開業率は下位10県の中に入っている。
 「ベンチャー企業のビジネスプランを拝見する機会がよくあります。そこで感じるのは、富山の起業家は計画を完璧なものにしようとする傾向が強いこと。リスクマネジメントを何重にも張っておられます。計画をきちんと立てることは大切ですが、変化の激しい今の時代では、考え過ぎている間に同じようなプランをもった人が先行したり、考えている間にモチベーションが下がってしまうこともある。そのあたりが一つの要因となって、開業率の低さになって表れているのではないか。新規事業は軌道修正しながら進めるケースが多いですから、計画が6~7割できたら、とにかく起業してみることです」と答えが返ってきた。
 誤解を恐れずに平たくいうと、“もっと軽いノリで起業しよう”ということか。長尾教授はこのような考え方で、県が従来行ってきた「ベンチャープラザとやま」(起業家がビジネスパートナーを求めるためにプランを発表する事業)と、装いも新たにスタートした「とやまベンチャーマッチングフェア」に参画。マッチングフェアでは、プランの実現性をより重視するために、投資家やパートナーとの出会いの機会を前面に打ち出したのであった。
第1回目(平成18年2月)のベンチャーマッチングフェアの様子。1社20分プレゼンテーションの時間の中で、ビジネスプランを発表。別室の商談コーナーで、引き続き質問等にも応じる。

 (ちなみに第2回目のベンチャーマッチングフェアは、平成19年2月22日(木)開催予定。
 詳細は
http://www.tonio.or.jp/match/


文系・理系を超え、大学の枠を超えた地域連携が必要では…

長尾治明(ながお はるあき)教授
 また、長尾教授は富山の製造業の優れた点を指摘しつつも、「今の時代は、いいものをつくっても売れない時代であることを知っておくべき」と強調。「これだけいいものをつくっても売れないのは、営業のがんばりが足りないから…と思いがちですが、それは間違いであることが多い」と付言した。
 そこで大切なのは、その商品のマーケット、消費者の声を調べてみること。当たり前のことではあるが、消費者のニーズとかけ離れていては、どんなに素晴らしい技術・商品も、消費(購買)の対象にはならないのである。
 「どんなにハードがよくても、それを活かすソフトがないといけない。そういう意味では地域連携、産学連携には、文系・理系を超えた協力、大学を超えた協力があってもいいのではないかと思うのです」
 長尾教授は、技術系・理科系とは違った立場で取り組む同校や地域学部の地域連携のあり方を総括しながら、「より一層地域連携を進めたい」と取材を締めくくった。ちなみに、地域研究交流センターの研究員は、地域学部の先生方が兼務し、セミナーの講師なども気軽に応じてくれるという。
 



[富山国際大学] 
○沿革(主なもの)
 昭和38年 学校法人富山女子短期大学設立・開学
 平成2年 法人名称変更、富山国際学園に富山国際大学開学(人文学部1学部)
 平成12年 人文学部を人文社会学部に改組、地域学部を増設
○所在地 〒930-1292 富山市東黒牧65-1 TEL(076)483-8000(代表) URL http://www.tuins.ac.jp/

Copyright 2005-2013 Toyama New Industry Organization All Rights Reserved.